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養生訓

人のからだは、天と地をはじまりとし、父と母を元としています。天地と父母の恵みを受けて生まれ、また養われた我が身ですから、わたしだけのものではありません。天地の賜物であり、父母の残したからだですから、慎んでよく養い、損なわないようにし、天寿を長くたもつべきです。これが、天地・父母に仕える孝の本なのです。からだを失っては仕えることができません。

これは貝原益軒が江戸時代、正徳2年(1712)に著した『養生訓』の書き出しです。実に益軒83歳の時です。当時の人の寿命は60歳を超えたら長生きと言われた時の83歳ですから、今なら100歳にも匹敵するでしょう。

先ほどの続きを読んでください。

我が身であるものは、例え小さな皮膚や髪の毛でさえ、父母から受けたものですから、むやみに損なうことは不幸です。このように続き更に人としてこの世を生きるなら、ひとえに天地・父母に孝を尽くし、人として守るべき道を進み、義理に従って出来るだけ幸福になり、長生きして喜び楽しむことが、ほんとうの人の願いというものです。このようになろうとするのであれば、まず今述べたことをよく考え、養生の道を学び、我が身を大切にすることです

これが人生で一番大切なことです。人のからだはこの上なく貴く重いものであり、世界の何物にも変えがたいものではないでしょうか。

人生は楽しむべきです。命が短ければ、世界中の富を得ても全く意味がありません。財産を山のように積んでも意味がないのです。そのようなことですから、道に従い、からだを大切にし、長寿であることがもっとも大きな幸福なのです。

とこのように述べて具体的な健康法を長々と説いています。そこにはこのような記述が有ります。

養生の術は、まず自分の身体を損なうものを無くすべきです。身体を損なうものに、内欲と外邪があります。内欲とは、食欲、色欲、睡眠欲、好き勝手に話したいという欲、喜び・怒り・憂い・思い・悲しみ・恐れ・驚きの七つの情の欲のことです。外邪とは天の四気です。風・寒・暑・湿のことです。内欲を抑えて少なくし、外邪を恐れて防ぎます。こうすれば元気を損なわず、病気にならず天寿を全うすることができます

分かりきった訓えですが、簡単そうで中々出来ない。

外邪の二つ、暑と湿の真っ只中で我々には日々の仕事が待ち受けています。どの様に折り合うのかは、1人1人の工夫待ちです。健やかにお過ごしください。 会長の独り言でした。