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言葉

 「秋の田の かりほの庵の苫をあらみ わが衣手は露に濡れつつ」 天智天皇

 小倉百人一首の1番目の歌です。言葉遊びが好きな方は子供時代百人一首に親しんだ事もお有りでしょう。この歌留多は歴代の天皇、著名な歌人、僧侶等の作品を藤原定家が編纂したもので、坊主めくりという御遊びも懐かしい思い出です。朝晩と日中の寒暖の差が激しくなり、我々高齢者ばかりか若い人も子供さん達にも身体の反応が追いつかず不調を訴える事が多くなっているこの頃ですが、皆さんは如何ですか?天気の良い日は我が家の庭先のテラスにソファを据えて日向ぼっこを兼ねてゆっくり読書にいそしんでいます。直射日光に当たらぬように頭上には日除のテントを張っていますので大変心地良い。先日は季節外れのセミの声。あのツクツクボウシが大きな声を上げていました。

 今月号のテーマは言葉です。この原稿もそうですし、皆さんの日常のコミュニケーションも言葉でのやりとりですね。頭の中、心の中で思ったり考えたりする事ができるのも、やはりこの言葉のおかげです。誰がどこでいつどうやってこの言葉を編み出したのでしょうか?それも世界中あちこちで様々な言葉が入り乱れているのです。我々が日常理解出来る言葉なんか知れたものです。私なんかブラジル生活のお陰で学生時代に習った英語、独語に加えてポルトガル語、その親戚のスペイン語とちょこちょこと韓国語などは理解できます。しかし日本語ほど豊かな表現力に恵まれた言葉は無いのではないかと思います。冒頭に上げた和歌、俳句、川柳、狂歌等々。使用する文字も漢字、平仮名、片仮名に加えてアルファベット、数字、ローマ字と多彩です。新約聖書の冒頭に有名な言葉が有ります。『始めに言葉ありき』です。意味するところは、世界中のあらゆるものは全て言葉によって成り立っているというものです。聖書にしろ、お釈迦様の教えの仏典にしろ、イスラム教のコーランと全ての経典も言葉によって伝わっています。古の歌人を偲び秋の夜長に百人一首の歌など口ずさみながら過ごすのも如何なものでしょうか。

 締めに言葉遊びを披露します。「大きな帽子の猫」 これで皆さんはどの様な状況を思い描きますか?二通りの見方が有るのです。素直に解釈すれば大きな帽子をかぶった猫。別の見方は帽子をかぶった大きな猫。この様に言葉は発信する人、受け取る人によって大きな違いが出るのです。面白いですね。  会長の独り言でした。